出版社:明石書店 著者:トマ・ピケティ(著) 尾上修悟(訳)
発行:2020年02月
本書は、1997年に初版刊行の専門家向けテキストという位置づけで、ピケティが、「不平等」をテーマに経済学の視点から解き明かしている。経済学とあるものの、その内容は経済にとどまらず、社会、政治、教育などもカバーして論じている。彼は、現代の不平等の核にあるものとして、経済的不平等、特に労働所得の不平等に着目し、その解消策としての再分配について理論的に分析している、その視点は、彼の著書「21世紀の資本」の原点ともいえる。労働所得の不平等の要因として技術力に基づく人的資本の不平等を挙げ、それは教育機会の不平等であると指摘し、公共政策の重要性を説く。また、再配分については、累進税を中心とした租税システムの転換による財政的再分配を強く主張する。日本も景気の状況が不安定さを増す中で経済的格差のさらなる拡大も懸念されるが、改めて不平等の解消について考えるきっかけとなる1冊である。
事業開発部次長 平田エマ
表紙は明石書店サイトから引用