出版社:冨山房 著者:モーリス・センダック 作・新宮輝夫 訳
発行:1975年12月
いつのまにか私の本棚にこの絵本はありました。『かいじゅうたいのいるところ』は大人になり、改めて絵本が好きになって、昔読んだ自分の絵本たちを整理している時に再会しました。この本で思い出すのは、怪獣が眠っているインパクトある表紙と「かいじゅうおどり」です。たしか怪獣は目がギョロギョロした毛むくじゃらだったはず・・・と懐かしく思い、久しぶりに手に取りました。
「いたずらをして大暴れしたマックスは、お母さんに叱られて自分の寝室に閉じこめられてしまいます。すると、部屋の中ににょきりにょきり木が生えて、森や野原のように。そこへ船が打ち寄せられ航海すると、かいじゅうたちのいるところへ。かいじゅうならしの魔法を使ってかいじゅう達とマックスは踊りを始めます。はじめは楽しく踊っているマックスだったけれど、さびしくなって・・・。」
読み返して色んな発見がありました。それは絵です。物語のはじめのページの絵は小さく、ハガキくらいの大きさです。それが次のページでひとまわり、次でまたひとまわり、次で、次で、と段々大きくなっていくのです。そして「かいじゅうおどり」でページ全体に広がります。文字も無いのですが、一面に描かれた怪獣とマックスからはノリの良い音楽や歌い声や笑い声が聞こえてきそうです。最後はさびしくなった一緒にまた絵はひとまわりずつ小さくなっていくのです。私は、この絵の広さは想像力を表していると思いました。部屋から想像力を働かせて冒険の世界へ、こわい怪獣がでてきて・・・。いたずらっこのマックスが考えそうな楽しい空想です。この空想こそ子ども達にとって大切なものだと思います。
想像は頭を柔らかく心を豊かにしてくれます。また、想像することによって人の気持ちを理解することや周りに対する配慮を身につけていく手助けになると思うからです。もちらん子どもの頃はそんなことは考えたりしていませんが、頭の中で広がっていく怪獣達の世界にマックスと一緒にワクワクしたことを覚えています。想像する楽しさをこの絵本からもらいました。
またこの怪獣は、センダックによると親戚の叔母さんのある言葉をイメージしているそうです。
「なんてかわいい坊やだろう。食べてしまいたいわ」
この言葉は、大人ならなんだか身に覚えがあるような気がします。この怪獣達は大人なのでしょうか?よく見ると表紙の怪獣は足が人間の素足です。そんなことを考えながら読むとまた違った印象を与えてくれます。
評者:紀伊國屋書店福岡本店 児童書担当 首藤佳奈子
引用:表紙は冨山房サイトから引用