出版社:日本経済新聞出版社 著者:トーマス・フリードマン
発行:2009年3月
バラク・オバマはチェンジをスローガンに米国初の黒人大統領になった。チェンジの重要な柱として就任前から掲げられてきたのが、エネルギーや資源を節約するための技術や再生可能エネルギーへの投資による大規模な雇用創出―グリーン・ニューディール政策である。本書の主張するところは、訳者後書で述べられているように、オバマ路線と重なっている。著者トーマス・フリードマンは、『レクサスとオリーブの木』や『フラット化する世界』などのベストセラーを書き、これまでにピューリッツァー賞を三度とったジャーナリストである。
著者の説く真のグリーン革命とは、飛行機以外の交通手段をすべて電化し、建物をすべてもっとエネルギー効率が良いものにして、建物と交通手段への電力供給を頭のいい高圧送電線網(エネルギー・インターネット)を使い、クリーンで信頼できる安くて豊富な電気に切り替えることである。エネルギー・インターネットの構築ができれば、エネルギー需要のピークと谷間をならすことで、エネルギー効率を高め、風力や太陽光などの再生可能エネルギーの利用を増やして、今よりも少ない発電所で、もっと成長できる。そこにクリーンで信頼できる安くて豊富な電気を発生するエネルギー源の発明や、石炭・石油・天然ガスの使用を劇的に減らせるような発明が加われば、革命は完璧なものになるという。
著者は、米国がグリーン革命に踏み切れば、クリーンパワーやエネルギー効率の高いシステムへと変革し、いよいよ危機に瀕している自然界を保護しようとする倫理をひろめる世界のリーダーになれる、そして中国は米国に追随しなければならないと考えると主張している。温暖化ガス1990年対比25%減の目標を経済界と相談なしに世界に公表した鳩山首相も、本書を読んだのではないかと想像される所以である。アル・ゴアの『不都合な真実』とともに、併せて読まれることをお勧めしたい書である。
評者:九州経済調査協会 前理事長 今村昭夫
引用:表紙は日本経済新聞出版サイトから引用