出版社:中公文庫 著者:マルサス(永井義男訳)
発行:2019年7月
地球環境問題、温暖化問題などがクローズアップされている昨今、私も大学において「環境」と「経済」に関する講義を担当する機会が多くなってきている。「経済学」はもちろん、「環境問題」は勉強をすればするほど、私は自分の勉強不足と人間的な幅の狭さを痛感してしまう。しかし、環境問題は究極のところ、この地球上において人間がどのように兼ね合いを持って自然と向き合って生きていくのか、死んでいくのか、世代を繋げていくのかという問題であり、その意味では、現在地球のキャパシティを人間の数は明らかに超えているのだろう。そういう意味でも、マルサスの「人口論」を再度読み直すことの意義は大いにあると思う。マルサスの「人口論」は初版と第6版が現在入手しやすい状態にある。初版と第6版は一部の専門家によればまったく別の著作とも考えられるという(私もそう思う)が、とりあえずは入手しやすい初版本を手にとって、「経済学」とは何か、生きるとは何かについて向き合ってみていただきたい。
評者:熊本大学法学部 法学科教授 外川健一
引用:表紙は中央公論新社サイトから引用