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失敗の本質 -日本軍の組織論的研究

2009.12.27

 

出版社:ダイヤモンド社 著者:戸部良一、寺本義也ほか

発行:1984年5月

これは、第二次世界大戦中に日本軍が行ったいくつかの作戦の失敗を考察し、なぜそのような作戦が予定され、実行され、しかも思惑どおりにいかなかったのか、を分析づけている本である。対象となった作戦とは、たとえばノモンハン事件、インパール作戦、ミッドウェー海戦などだ。そのひとつひとつの作戦の背景をプロローグとして描き、作戦そのものを組織論的アプローチで解説し、最後にそれぞれ「アナリシス」としてその作戦の失敗の理由を分析している。
ここで複数の作戦の失敗の理由に出てくるのは、現場と中央との意思の乖離、である。「こんな作戦は非常識で、もしこれを実践しようとするならば自分の首を切ってからにせよ」とまで現場から声が上がっていたにもかかわらず実行された、インパール作戦。「アナリシス」によれば、それは日華事変を引き起こした一参謀が自分の失地回復のために行おうとした作戦だったという。陸軍上層部も「彼が一所懸命やっているから」という理由でこの作戦の実行を承認してしまう。同じようなことがあなたの組織で起こっていないだろうか。
本書は、「学習を怠った組織は、滅亡する」とも説く。開戦時の真珠湾攻撃や戦艦プリンス・オブ・ウェールズの撃沈の「成功」体験から得るべきものは、巨艦時代の終わりと航空兵力こそが勝敗を分けるという時代認識でなければならなかったのに、実はそれを学び取ったのは他ならぬアメリカだった。ここにいう「組織」とは軍隊だけを指すのではない。県庁しかり、会社しかり、である。戦後、軍隊と最も類似性を持って発展してきたのは企業組織ではなかったか。その企業組織はいま自己革新がきちんとできているだろうか?
「あなたの会社は失敗に学んでいますか?」「失敗から学習して、それを経営に反映させていますか?」自信を持ってYESと答えられなかったら、ぜひこの本を読んでみてほしい。

評者:佐賀県知事 古川康

引用:表紙はダイヤモンド社サイトから引用

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