出版社：筑摩書房　 著者：駒崎弘樹

発行：2022年01月

「政策起業家」とは、官僚や政治家だけでは解決できない複雑な政策課題に向き合い、公の為の課題意識のもと、専門性・現場知・新しい視点を持って課題の政策アジェンダ化に尽力し、その政策の実装に影響を与える個人を指すという。新卒かと見紛うような柔和な外見とは裏腹に、著者の駒崎氏はとてもタフだ。困っている人たちを助けるために、無理だと突き放されても諦めず、くじけそうになりながらも突破口を見つけ、社会制度に果敢に立ち向かってゆく。涙と笑いのエピソードの中に、個人やNPOが政治に働きかける方法が具体的に記されている。法律に組み込まれて制度になっただけでは満足せず、「神は制度の細部に宿る」をモットーに、本当に困っている人たちが救われ、社会が変わるまで活動を続けていく。困りごとの解決・対策方法が制度になり、多くの同志たちに参入してもらい、実践を広げることで、助けられる人たちが爆発的に増えるのだと言う。駒崎氏のような志ある市民やNPOが社会問題に対して小さな解を生み出し、それを国が政策化し、社会を変えていくという、絵空事ではない回路が実在するのだ。

選挙に赴き、一票を投じることも大切な社会参加だが、そこからもう一歩踏み出す事で、小さな個人が大きな変化を生み出せるという奇跡の軌跡を綴った一冊。

BIZCOLI　近藤孝子

表紙は筑摩書房サイトから引用