出版社:あさ出版 著者:坂本光司
発行:2008年3月
同書は大学教員である坂本氏が研究室を飛び出し、北海道から沖縄にいたるさまざまな中小企業の現場を訪問調査するなかで(その数はなんと6千社を超える)、長期にわたり好業績を持続している企業や、業績はともかく、真に世のため人のためになる経営に取り組んでいる企業を紹介したものです。こう書いてしまうと、よくある成功企業の紹介本かと思われるかもしれませんが、この本がベストセラー(私の持っているのもすでに26刷目ですから、今はさらに増し刷りをしていることと思います)となっている背景として、長期に経営を持続している企業は、金儲けを目的とするのではなく、社会の公器としての役割を果たしていることがあり、そこに多くの読者が共感していることにあります。
そうした企業になるかどうかはまさに経営者の考え方、生き様が大きく左右しますが、大企業のようなサラリーマン社長や雇われ社長では不可能だと思います。地域で生まれ育ち、地域を思って経営する中小企業の経営者だからこそといえます。もちろん、全国には何百万という企業があるわけですから、その全てがこうしたすばらしい企業とは限りません。むしろ、ほとんどは“5つの言い訳をする企業”すなわち、「景気や政策が悪い」「業種・業態が悪い」「規模が小さい」「ロケーションが悪い」「大企業・大型店が悪い」といった被害者意識の強い他力本願の企業です。
同書では5つの企業が紹介されていますが、こうしたすばらしい企業が増えていくことが地域の未来を明るくすることにつながると思います。
評者:兵庫県立大学経営学部 教授 池田潔
引用:表紙はあさ出版サイトから引用