出版社:慶應義塾大学出版会 著者:福澤諭吉
発行:2001年1月
中津出身の福澤諭吉はまず漢学を学んだ上、封建の門閥制度は親のかたきとし、長崎、大阪で学び、江戸で英学を志すことになる。
福澤諭吉は独立自尊を説き、個人の自立こそが国家の自立の前提となるとしたが、本人は、「人の知恵を借りようとも思わず、人の差図を受けようとも思わず、人間万事天運にありと覚悟して、努めることはあくまでも根気よく努めて」という心を定めていた。
福澤諭吉が自分の生き方を求めて努力を重ねるうちに、それが見えた時に安心決定(あんしんけつじょう)という言葉を多用しているが、この安心決定を得ることが我々にとっても大切なことであることが、本書を読むことで理解できるのではないか。
私の関心は、文明に関する洞察をなぜ福澤諭吉は政府の中に入って活かそうとせず、在野にいつづけたか、ということだった。
「福翁自伝」は岩波文庫にも収められているが、文語体のためはじめの数ページで挫折したが、口語体の本書を読むことができ、本自伝のすばらしさを実感できた。
評者:九州管区行政評価局長 渡辺信一
引用:表紙は慶應義塾大学出版会サイトから引用