出版社:平凡社ライブラリー 著者:渡辺京二
発行:2005年9月
変化の時代といわれる今日この頃であるが、近代日本の大きな改革は間違いなく「明治維新」であろう。大政奉還や廃藩置県他数々の施策が次々と行われ、近代日本の礎を築き、我々の日々の暮らしも大きく変わっていった。さらに戦後の改革を経て、現在の我々の生活様式・価値観が形成されていったものと思うが、そこで過去のものとなった、明治維新前の人々の暮らしや日常の様子は、全くと言って良い程知られていないものである。私自身そう昔でもない、江戸中期以降の「江戸文明」とでも言うべき、人々の暮らしぶりは理解していなかった。
本書では日本を訪れた外国の人たちの記録や、その当時の日本人の日記など生の記録をベースに、我々が失った素朴な日本の生活様式・暮らしぶり・価値観といったものが纏められている。その人たちの目を通して、「貧乏人はいるが、貧困は存在しない」「シンプルだから悲惨というものがない」「風変わりな、絵のような」社会が描かれていて面白く、読み応えのある本である。興味深く当時の生活をうかがい知ると同時に、幸せとは何か、大切にすべきものは何かを考えさせられ、今でも時折読み返している。
評者:株式会社山口銀行 頭取 福田浩一
引用:表紙は平凡社サイトから引用