出版社:幻冬舎 著者:宇野常寛
発行:2020年2月
筆者は、1964年の2020年の東京オリンピックで、人々のスポーツへの関わり方について、前者は「観る」もの、後者は(自分で)「する」ものへと変化しつつあることを指摘し、インターネットの情報との関わり方でも同じことが言えるという。インターネットは、人々の生活に浸透し、デバイスの変化と通信技術の向上で可搬性、利便性が一気に加速するとともに、ユーザーからも情報を発信できるようになった。しかし、あらゆるニュースと関連する意見が目まぐるしく飛び込んでくることで、咀嚼し、自分の考えをまとめる暇がなくなったと感じるのも事実である。本書では、現在のインターネットは人間を「考えさせない」道具になっていると指摘した上で、今必要なのは「遅い」インターネットであると主張し、そのために発信側のメディアと受信側の読者コミュニティの関係を結び直し、スローに読み、考え、発信できる読者の育成の必要性を説いている。主体的なインターネットとの関わり方を考える上で、時折開いて読み返したくなる1冊である。
事業開発部次長 平田エマ
表紙は幻冬舎から引用